きろく

舞台の感想など、ゆるーく、あつーく。

舞台「この音とまれ!」を観てほしい

なるべく抜きにして書くつもりだけど、推しが初主演ですと最初にバイアスを宣言しておきます。
配慮はしたいけどネタバレは当然する。



『生演奏』が売りなのは周知のことと思うけど、それが一体舞台としてどんなもんなのか?

公演情報が解禁になったとき、「それって舞台として成り立つのかな?誰が見ても面白いのかな?」と正直思いました。
学生の頃、学校の芸術鑑賞会なる場でプロのオーケストラや伝統音楽の演奏を聴いても、それが上手いのか下手なのか、すごそうだけど何がすごいのかさっぱり分からず半目になっていた私(寝んな)。今回何かしら興味を持ってお金を払って観る客でも、素人から始める役者さんの演奏を聞いて「すごそうだけどよく分からん」にならないかな?というのが正直なところでした。



どっこい、めっちゃすごい。何が、とかじゃなくすごい。(即手のひら返し)
「琴の演奏の良し悪し分かるかな?」とかそんなことは考えなくて大丈夫です、マジで。


難しい琴の生演奏だからすごい!ではないんです。演奏前に舞台前方に横並びになる箏曲部員からありありと伝わる緊張感。そして古田氏演じる部長の覚悟を聞くと、客席の緊張は舞台上と種類は違えど確実に何か同じ世界を共有する特別な空間に。
そして演奏が始まると………これは劇場で観て聴いて。(投げる)
演奏終了後に手が痛くなるくらい拍手をする自分は、時瀬高校の体育館でモブを知らず演じてしまっていることにあとから気付きます。(これは本当、観た人は漫画読み返してみて。笑うから。)



演奏は開演から(たぶん)1時間25分頃、そこまでの時間は箏や音楽に関する専門的な知識については最低限で、キャラクターや関係性を丁寧に描くことに費やされています。キャラクターと箏の向き合い方、どういう場面のどういう曲の演奏なのか。前半を踏まえることで、目の前の彼らがキャラクターとして、お芝居として演奏している説得力がぐっと増しています。演奏前の緊張感は演奏前だから、ってだけではないんです、そこまでがあっての張りつめた空気、行かないと分からない…!


原作では演奏のクライマックスで龍の躍動する扉絵が描かれています。舞台でも最近流行りのプロジェクションマッピング的な何かで視覚的な演出をするのかな?という個人的な予想でしたが、、、あくまで演者の演奏のみ一発勝負。このシンプルさが高校の体育館での場面としてリアルです。派手な演出などはないのに、演奏後客席から沸き起こる拍手は本物だと思います、これこそ劇場で生で観る醍醐味、と感じるはず。(これを体感してからもう一度原作を読むのも良い。)


上演時間は休憩なし2時間弱、ぐっと集中して観られると思います。
原作・アニメ・役者さんのそれぞれのファン、家族連れから男性1人客まで幅広い世代のお客さんがいて、みんながお芝居に集中して、演奏前はその緊張感を、演奏後はその感動を共有する、こんな特別な体験なかなかできないな、と思います。演奏でお芝居として殴られる感覚、こんなことって私は初めてで衝撃でした。


残り5公演しかないです。福岡と大阪しかないです。愛を持ったお芝居と、半年練習し続けた箏の音が、できるだけたくさんの人に届きますように。舞台「この音とまれ!」を見てください。(大千秋楽以外はアフターイベントもありますよ!)










ちなみに・・・
今回演奏される『龍星群』は原作者アミュー先生のお姉様でプロの箏奏者の方が作曲。ストーリーやコマ割、キャラクターの関係性を踏まえて曲が作られています。原作・アニメを履修するとよりその曲の感動的な作りが分かり、演奏中の視点も新たなものになって楽しめます。演奏中の動きや視線、指と音から分かるパートの特徴の端々に、役者さんたちの役としてのお芝居が込められています。(箏のことは詳しくないけどたぶん)。


ついでに・・・
箏に関する知識や演奏の技法をキャストさんたちが習得していく過程が、6月頃から隔週でペリスコープで配信されていました。舞台の公式Twitterにログがあるのでリプレイで見ることができます。キャストさんたちが部活動のように作り上げた関係性も見えてきて面白いです。ちなみに稽古の様子はパンフレットの対談にも細かく文字起こしされていますし、キャストが手持ちカメラで撮影した箏の練習の様子もDVD(劇場で予約受付中)に収録される予定です、たぶん。(憶測で宣伝)










(以下推し語り、読まんでいいです)
正直、推しが半年かけて一から習得した箏を、一発本番6分以上演奏することを考えたら吐きそうなくらい緊張した。上演中休憩がないってことはリハも音出しも上演前しかできないし、どんなに緊張しても前後のお芝居はブレちゃいけない。………そんなん普通吐くやん………(いきなり語彙力低下)。だけどいつだって本番でこっちの想像を越えたものを見せてくれるのが推しなので………いつも通り役に真摯な推しを、初座長の推しをみんな観てほしい………(本音)。
確かな実力ベテランのキャストさんに支えられ、初舞台から2年以上一緒にいた古田氏もいて。見えないたくさんの手によって愛(あい)を持って作られた舞台を、座長として届けてくれる姿が見られて、本当に幸せです。大阪公演まで無事に終えられますように。そして何か次に繋がりますように。